盗み見た愛

あのメス豚が羨ましい。

きっと世の殿方さまは、あんな女がお好きなのでしょう。
私の向かいには、若い男女が一組、並んで座っておりました。
電車内でございます。
どうも恋仲ではなく、バイト仲間といった風情です。

男性のかたは、少し野暮ったい感じではありますが、実直そうに見受けられました。
俯きながら、学校のことなどを話しているのですが、
それを聞く女は、
顔を完全に男性のほうへ向け、眼を見つめ、
「ウン、ウン」と微笑みながら、うなずくのです。

気の毒な男性は、まるで脳のトレーニングでもするかのように、指をくるくると回し、
床のあちらこちらに目を遣ります。

きっと、嘘偽りのない、好意なのでしょう。
そして男性は、その好意に応え、勇気をもって愛の告白をするでしょう。
すると女は、嬉しそうに困った顔をして、男の目を見つめて言うのです。
「私、友達としてしか、みれないよ」

ああ、あのメス豚が羨ましい!


「視ること、それはもうなにかなのだ。」
梶井先生の仰るとおりです。
私は、人の眼を見て話す人、信じません。
そんな恐ろしいことを平然とする人は、悪魔の手先に違いありません。
「眼を見てしゃべれ!」
悪魔の合言葉。

最後につまらない忠告をひとつ。
「電気を消したあの子は、王子さまに抱かれた気だから、気をつけて!」

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